イギリスとシルバー製品

アンティーク屋さんに入ればよく見かける銀製品。


日本の一般的な家庭ではあまり馴染みのないモノのように感じますが、イギリスへ行けば一度は目にするのではないでしょうか?

ディスプレイにはもちろんのこと、ホテルや、カフェにて未だに使っているとこともあります。

紅茶大国のイギリスではまさに、日用品の一つ。



アンティークシルバーは18世紀初頭まではヨーロッパの貴族達、それもごく少数の人々にしか手にすることができなかった貴重なものでした。

家紋が刻まれた銀器は貴族の家でも家督を受け継ぐ者だけに相続されており、貴族としての証や富の象徴の意味をなすひとつの道具として扱われていたのです。


アンティークシルバーの市場において、品数の豊富さはフランスよりも圧倒的にイギリスが大多数を占めます。



貴族文化はフランスやほかの諸ヨーロッパ各国も発展していましたがなぜでしょうか?



 その原因は幾つか考えられるのですが、大きな原因としてフランス革命、つまり貴族体制の崩壊にあります。その後20世紀初頭に至るまで、ヨーロッパの大半の国が同じような運命をたどります。


立ち上がった市民達の革命によって次々と貴族体制が崩されていった時代、、、

その中でイギリスは王権と貴族制度が維持され続けてきました。

そうして生産され続けた銀器が今の時代、代々のアンティークシルバーとして受け継がれ残っています。


イギリスには産業革命によって16世紀頃から資本主義が少しずつ発展し、産業の工業化や植民地の拡大により、18世紀半ばから19世紀にかけて、どこの国よりもいち早く経済成長を遂げています。その早さは隣国フランスとでさえ100年程の差があるといわれています。

貴族に匹敵するほどの経済力を持った成り上がりの成功者たちの出現によって、銀器の環境もまた、変化が起こり始めます。 

この成功者はミドルクラスと呼びますが、彼らは自らの富と成功を、貴族たちの生活様式を真似ることで表現しました。彼らもまた貴族の暮らしぶりや立ち振る舞いに憧れを抱いていたのでしょう。これは銀製品だけでなく家具やそのほかの生活にまつわる物全てに影響していきます。そしてその下で働く人々もまた、生活水準がどんどん上がっていくので、需要も高まります。




アンティークシルバーはホールマークによって歴史や背景を紐解くことができます。

本来、由緒ある家柄ではホールマークと一緒に代々受け継がれる紋章(ダブルモノグラムのようなマークです)が銀器に刻印されてきましたが、背景を持たないミドルクラスの人たちには先代から伝わる紋章がありません。そのため、紋章が刻まれない銀器が普及されました。そして、需要が高まり続け、EPNS、シルバープレートと呼ばれる銀メッキ製品も生産されるようになっていきます。


銀製品は資産として、代々受け継がれてきました。

大切に受け継がれたものを、私たちもまた次の世代へ残せたら素敵ですね!